子どもの歯並びは自然に成長で治る?咬合誘導の重要性を歯科医が解説
2025/09/20

「乳歯の歯並びが少しガタガタしているけど、そのうち永久歯に生え変わるから大丈夫?」
「出っ歯っぽいけど、成長すれば治るって本当?」
このような疑問を抱える親御さんは少なくありません。
子どもの歯並びは成長とともに変化していくため、「自然に治る」と思ってしまいがちですが、実は放置すると将来的に矯正が難しくなるケースもあります。
本記事では、子どもの歯並びと成長の関係、そして咬合誘導(こうごうゆうどう)と呼ばれる早期のアプローチの重要性について、専門的な視点から詳しく解説します。
子どもの歯並びは自然に治ることもある?結論:ケースによる!
子どもの歯並びが「成長で自然に治るのか?」という質問には、「治る場合もあるし、治らない場合もある」というのが正しい答えです。
自然に治る可能性があるケース
乳歯の時点で軽度の隙間(空隙歯列)がある場合
一時的な指しゃぶりの影響で軽く前歯が出ている
一部の歯が生え変わり途中でズレているだけの状態
このような場合は成長や生え変わりで自然に整うこともあります。
放っておくと悪化するケース
上顎や下顎の成長バランスが崩れている
舌癖や口呼吸の習慣が続いている
乳歯の虫歯・早期脱落でスペースが失われた
明らかに受け口・出っ歯・交叉咬合(クロスバイト)がある
これらは成長を待つだけでは改善せず、むしろ大人になってからの治療が困難になることも。
「咬合誘導」とは?成長を味方につける早期の歯並び対策

「咬合誘導(こうごうゆうどう)」とは、子どもの成長発育に合わせて歯や顎の位置・バランスを整えるための矯正的アプローチのことです。
永久歯が生えそろう前(6〜12歳頃)に行うのが一般的で、「第1期矯正」とも呼ばれます。
咬合誘導の目的
顎の骨の正しい成長をサポート
永久歯がきれいに並ぶためのスペース確保
悪い癖(舌癖・口呼吸など)の改善
噛み合わせのズレを整える
咬合誘導は歯並びそのものを治すというより、“将来的に整いやすい環境”をつくることが目的です。
咬合誘導が必要な代表的な症例と、将来のリスク
咬合誘導は「将来の歯並びや顎のバランスを整えやすくするための早期対策」です。
以下のようなケースでは、ただ成長を待つだけでは自然に治ることは難しく、咬合誘導が重要になります。
それぞれ、咬合誘導をしなかった場合に起こりうる将来のリスクとあわせてご紹介します。
① 出っ歯(上顎前突)

上の前歯が前方に突出している状態。指しゃぶり、口呼吸、舌の癖などが原因となっていることが多く見られます。
咬合誘導を行わなかった場合
出っ歯の程度が悪化し、唇が閉じにくくなる
唇の力が弱くなり、口呼吸や発音障害のリスク
永久歯列での矯正では、歯を抜かざるを得ないことも
上顎と下顎の骨格バランスが悪化し、顔貌に影響
咬合誘導の必要性
出っ歯は見た目だけでなく呼吸や発音などの機能にも影響する問題です。br>
成長期に上顎の前方成長を抑えたり、舌や唇の正しい使い方を身につけることで、歯を抜かずに整えるチャンスが広がります。
② 受け口(反対咬合)

下の前歯が上の前歯より前に出ている状態。遺伝や、下顎の過成長、または上顎の成長不足が原因です。
咬合誘導を行わなかった場合
成長とともに下顎がさらに前方へ成長し、骨格性の反対咬合に
永久歯での矯正だけでは対応が難しくなり、外科手術が必要に
顔つきが大きく変化し、コンプレックスになる可能性も
咬合誘導の必要性
受け口は、3〜5歳という早い時期からの介入で骨格のズレを最小限に抑えることが可能です。
特に成長が著しい小児期のうちに、上顎の前方成長を促す咬合誘導を行うことで、将来的な大がかりな治療を回避できることがあります。
③ 歯が重なっている・並びきらない(叢生)

顎の幅が足りず、歯がまっすぐ並ぶスペースがない状態。歯が重なったり、斜めに生えてきたりします。
咬合誘導を行わなかった場合
永久歯が重なって生え、見た目の問題が顕著に
矯正が必要になった際に、歯を抜く選択肢が避けられない
歯みがきがしにくくなり、虫歯・歯周病リスクが上昇
咬合誘導の必要性
永久歯がきれいに並ぶためには、十分なスペースを確保しておくことが大切です。
拡大床などの咬合誘導用装置を使うことで、非抜歯での矯正の可能性を広げることができます。
④ クロスバイト(交叉咬合)

奥歯や前歯の一部が、上下逆に噛み合っている状態。横方向のズレや顎の非対称が原因のことも。
咬合誘導を行わなかった場合
顎の成長が偏り、顔が左右非対称になる
噛み合わせがズレて咀嚼効率が悪化
将来の矯正で顎の位置を治すのが困難になる
咬合誘導の必要性
クロスバイトは放っておくと顎のズレが固定され、見た目や機能面に長期的な影響を与える可能性があります。
早期の咬合誘導で顎のバランスを整えることで、顔の左右非対称の予防にもつながります。
⑤ 開咬(オープンバイト)

前歯が上下で噛み合わず、常にすき間が空いている状態。舌を前に突き出す癖や、長期の指しゃぶりなどが原因です。
咬合誘導を行わなかった場合
食べ物を噛み切りにくい、発音しにくい
舌癖が定着し、永久歯になっても改善困難
大人になってからの矯正では治療が長期化・複雑化することも
咬合誘導の必要性
開咬は「癖」によるものが多く、早期に癖を改善しないと将来的な矯正が難しくなります。
マウスピース型の機能訓練装置などで舌の位置・呼吸・飲み込みの癖を改善することが非常に効果的です。
咬合誘導の主な治療方法
お子さんの症状や成長段階に応じて、次のような装置を使います。
拡大床
顎の幅を広げて永久歯の生えるスペースを確保
上顎前方牽引装置(フェイシャルマスク)
受け口改善。上顎の成長を前方へ促す
ムーシールド
幼児の受け口治療に使用。筋肉バランスを整える
プレオルソ(こども用マウスピース矯正)
習癖改善と歯並びの誘導を兼ねたソフト矯正装置
矯正用咬合板(ナイトガード)
噛み合わせの位置を誘導。夜間装着が多い
いつ相談すればいい?咬合誘導の適齢期とは
咬合誘導は「早すぎても」「遅すぎても」効果が薄れることがあります。
理想は6〜9歳ごろ(第一大臼歯と前歯が生えたタイミング)です。
以下のような兆候が見られたら、できるだけ早くご相談ください。
指しゃぶり・口呼吸が長く続いている
前歯が重なっている・隙間がある
噛み合わせがズレている
顔が左右非対称に見える
発音が聞き取りにくい
まとめ:お子さんの将来のために、歯並びの「今」を見逃さないで

子どもの歯並びは、「生え変わるから大丈夫」と思われがちですが、実際には放置すると矯正が難しくなるケースも少なくありません。
そのような将来のリスクを減らすために、咬合誘導はとても大切な第一歩です。
当院では、お子さんの歯並びに関する無料相談・カウンセリングを行っており、必要に応じてセファロ(頭部X線)やCTによる精密診断も可能です。
「これって放っておいて大丈夫?」という小さな疑問でも構いません。
ぜひお気軽にご相談ください。
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